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【連続ドラマ】
前のクールでは圧倒的だった『カーネーション』は、今期に入ってみごとなくらいにトーンダウン。その失望感を埋めてくれたのが『最後から二番目の恋』でした。
1 最後から二番目の恋(CX)
主演の小泉今日子・中井貴一が醸し出す雰囲気がなんとも言えず良かった。二人の好演に加え、舞台となった鎌倉や江ノ電沿線の、東京とは違う落ち着いた雰囲気、ゆったりした独特の時間の流れも好ましく思えました。
演者、ロケの映像、そして物語と、作品の全てが、人生の苦さをかみしめつつも肯定しようとしていました。毎回、笑って、ちょっと痛いところをつかれて、そして元気になるドラマでした。
2 ストロベリーナイト(CX)
犯罪のグロテスクな部分の描写には乗れませんでしたが、中盤はそういうシーンが出てこない話もあったし、何より、ヒロインのキャラが立っていました。また、捜査一課の各班のせめぎ合いという、刑事ドラマの魅力のひとつである組織の描写があったのもよかった。後半、主人公の未熟さが強調され、ノンキャリアで女性で若年にもかかわらず班を率いる有能な人物、という初期設定とやや整合性に欠け、人物造型がブレたように見えたのは残念でした。
3 カーネーション(NHK大阪)
前クールに比べて、人物の内面描写を端折って、時代をどんどん進めていき、とうとう糸子が老人になって、演者が交代してしまって…。しかもそれがみごとなまでにマイナスになっていた。あれほど良かった作品が日に日にダメになっていくのを、驚きながら、指をくわえて見守るしかない歯がゆさ。
とはいえ、作品としてみれば、前半がすぐれていたことは事実です。後半でも、パンパンになった奈津を助け出すエピはすごかった。奈津に何もしてやれず、無言で縫い物をする糸子をただ撮った数分間。そして糸子は、友人を救うため、関係が断絶していた安岡のおばちゃんに会いに行く。この、傷ついた者(奈津)を傷ついた者(玉枝)が救い、玉枝自身もまた救われるという展開にもすごみがありました。
そして礼を言いに来た奈津に糸子が、礼は言わんでええ、結婚式の時の借りを返しただけ、これでチャラや、と言います。尾野真千子の低い声が効いていました。
このように傑出した箇所も数々あったわけで、「良い部分もあった失敗作」という意味で、自分のドラマ鑑賞歴に記録しておきます。
4 タイトロープの女(NHK大阪)
池脇千鶴の芝居を堪能しました。
5 ハングリー!(KTV)
前半は登場人物の劇画的なデフォルメが鼻についたのですが、回を追うごとに、青春群像お仕事ドラマとしておもしろくなってきました。大森美香さんがスロースターターというのは、『不機嫌なジーン』などで分かってはいたことだけど、それにしてもエンジンが暖まるのがちと遅かったんじゃなかろうか。
次 ラッキーセブン(CX)
いかにもフジテレビのドラマらしく、人気者の演者をこれでもかというくらいに揃え、それぞれの人物のキャラクターがくっきりしていました。ただ、探偵ドラマとしての空気、たとえば往年の日本テレビのそれにあったようなものは希薄で、つまり、作品独特の世界をうまくつくれていなかったような気がします。そんなことは目的ではなく、旬のタレントが元気良く動き回る様を楽しめばいいのだと言われればそれまでなんだけど。
そのほかの作品。
『本日は大安なり』(NHK)
優香の拙さがちとイタかったのですが、これも、漫画的な「コミカルな芝居」というテレビドラマのパターンのひとつと考えられなくもない。終盤の種明かしがやや拍子抜けではあったけど、死体のでないミステリーとして気楽に楽しめました。
『ステップファザー・ステップ』(TBS)
往年の19時台のファミリー向けドラマのような明朗な楽しさがありました。しかも原作が宮部みゆきなので、ストーリーにひねりがあって、ファミリードラマ特有の幼稚さから免れていた。
『撮らないで下さい!!グラビアアイドル裏物語』(TX)
初回は全話のダイジェスト。各回の主人公がグラビアアイドルという仕事についての不満や鬱屈をぶちまけるシーンばかりをずらりとつなげていて、そのぶっちゃけぶりが強烈でした。
ただ、通常の展開に戻った第二話からは衝撃はさほどではありませんでした。また、フェイクドキュメンタリーとはいえ、あくまでフィクションであって、みな演技をしているというのはまるわかりなので、いくら「赤裸々な暴露」があっても、逆にバラエティでやらせを見たときのような虚しさがありました。肝心の「オーディション」の結果を明らかにしないまま終わった展開も、消化不良感を強めてしまいました。とはいえ、異色の試みであることはたしかで、その実験精神、挑戦的な姿勢は、記憶に値すると思います。
『聖なる怪物たち』(EX)
打ち切りで一回分削られたのでしょうか、終盤がバタバタしていました。直接的には韓流ドラマの影響でしょうが、そもそも、ああいう濃いドラマは、往年の日本のドラマ、とりわけ大映ドラマにあったものでした。大仰なばかばかしいシリアスさが楽しかった。ただ、ただ『聖なる怪物たち』のどぎつさは大映のそれとは微妙に違って、どこかスマート、スタイリッシュになっていて、逆に中途半端でもありました。やるならやるで徹底しないと気恥ずかしいだけになると思うんだけど…。
『運命の人』(TBS)
沖縄の米軍基地に関する密約が題材で、主人公が毎回のように、沖縄の人の苦しみを考えろと叫ぶのに、沖縄の人は登場しない珍妙さ。最終回で主人公が沖縄に隠遁したが、いかにもとってつけたよう。沖縄の人はあくまで恩恵を施される者として描かれていました。『坂の上の雲』もそうでしたが、植民地支配者の上から目線の醜悪さが鼻につくだけでした。
『ダーティ・ママ!』(NTV)
主人公の文字通りダーティなキャラばかりが鼻について、どうも後味の悪い話でした。
『妄想捜査~桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活~』(EX)
主人公は推理力に欠け、妄想好きという設定で、つまり主人公を描き込むと、物語のミステリーとしての進行が止まってしまうというのはかなり致命的だったと思います。桜庭ななみ、倉科カナ、竹富聖花たち大学のミステリー同好会をはっきり前面にだした、青春部活動ミステリーものにしたほうがよかったのでは。
以下は離脱作品、未見作品について。
『理想の息子』(NTV)
初回だけで離脱したのですが、途中の回から吉永淳さんが出演したと後で知りました。吉永さんは映画ではすでに昨年印象的な仕事をしており、個人的には2011年日本映画の新人女優賞に選んでいたので、このドラマもチェックしておけばよかったと後悔しています。
『最高の人生の終り方~エンディングプランナー~』(TBS)
葬儀屋が主人公ゆえ、毎回「ご遺体」が登場するという設定が、個人的にはちょっとヘビーすぎて、一話だけでパスしてしまいました。ただ、犯罪ではなく、ゲストがそれぞれが秘めた謎を解き明かしていく一種のミステリーという設定は、気になりました。死体はあるが犯罪性のない、人生そのものがミステリーであるというのは、個人的には好きなパターン。そのうち見てみたいと思います。
ほかに、長澤まさみが主演・二役の『分身』(WOWOW)、渡辺麻友が30代の女性をみごとに演じた『さばドル』(TX)、筒井康隆ファンにはたまらない『家族八景 Nanase, Telepathy Girls' Ballad』(MBS)、猫好きにはたまらない『くろねこルーシー』(KBSほか)も、初回しか見られませんでした。いずれ全話をきちんと見たいと思っています。
また、『贖罪』(WOWOW)も、小泉今日子・蒼井優・小池栄子というすごいメンツなので、なんとかチェックするつもり。
【単発ドラマ】
ほとんど見られませんでしたが、強く印象に残ったものがふたつありました。
「とんび」(NHK)
主人公の堤真一のキャラは、映画『Always三丁目の夕日』の登場人物のまんまでした。演者が過去に演じて評判になった映画のキャラをほぼそのまま流用するのって、安直にすぎると思います。
物語は、使い古された設定ではありましたが、定型は魅力があるから、何度も繰り返されるのでしょうし、この作品に描かれた「人情」はニセモノではなかった。小泉今日子が『空中庭園』『トウキョウソナタ』『グーグーだって猫である』などの映画で発揮してきた存在感を、テレビドラマでも見せてくれたという意味でも、記憶に残るドラマでした。
「その街の今は」(KTV)
関西では昨年放送されたようですが、東京では1月にようやく放送。ストーリーはわかりにくいのですが、イメージに訴えかけてくる作品でした。
街という場のもつ力や、街について人々が持つ過去の記憶が、傷ついた人たちを支える、そんな、言葉や映像にしにくい(つまり、わかり辛い)テーマではあったのですが、みごとに伝わってきました。民放の単発ドラマの企画が保守的になって久しいですが、まだこういうものを作れる余地があったのだと思うと、ちょっと希望がわいてきます。
【部門賞】
◎主演男優賞:中井貴一(最後から二番目の恋)
情けないとぼけた味がよかった。
◎主演女優賞:小泉今日子(最後から二番目の恋)
中井貴一との口げんか以外は、何があっても感情を高ぶらせない大人な女性をみごとに演じていました。そして、感情が高ぶらなくなってしまった自分の年齢故の変化を、一抹の悲しみを感じながらも受け入れ、肯定してゆく様も魅力的でした。
◎助演男優賞:武田鉄矢(ストロベリーナイト)
出番が思いのほか少なかったですが、「ガンテツ」はやはり強烈でした。
◎助演女優賞:鈴木杏(聖なる怪物たち)
途中まではこんな地味な人物役になぜ杏ちゃんを起用したのか疑問だったのですが、最後まで見て、なるほど、あの人物の生命力の強さを演じるものとして、最適の人選だったとわかりました。
ほかに佐津川愛美(最後から二番目の恋、本日は大安なり)。自己中心的だけど憎めないキャラを好演。女の子女の子したキャラが印象的だった佐津川さんが「女優」として一本立ちした感があります。鶴田真由(デカ黒川鈴木)。刑事の妻としてのつましい生活への不満を、事件現場におしかけてぶちまける元お嬢さまがおかしかった。
◎新人男優賞:思いつきません。
◎新人女優賞:渡辺麻友(さばドル)
一話しか見ていませんが、実年齢の役と30代の役の二役をこなしただけでなく、30代女性へのみごとな成りきりぶりはすごかった。ほかに入来茉里(ラッキーセブン)。
◎主題歌賞:Yael Naim(ヤエル・ナイム)「Go To The River」「Far Far」(最後から二番目の恋)
挿入歌ですが、この曲がかかるたびに登場人物たちの滑稽さ、トラブルに直面しての右往左往ぶりが効果的に強調されていました。
ほかにその『最後から二番目の恋』の主題歌で浜崎あゆみ「how beautiful you are」。同じ制作チームの『優しい時間』『拝啓、父上様』『風のガーデン』と曲調が似ている(似せさせられた?)ので損をしていますが、夜11時直前という時間に合った、落ち着いた良い歌でした。
◎タイトルバック賞:最後から二番目の恋
これも倉本聰の三部作を踏襲したデザインではありますが、ちりばめられた写真の雰囲気が好ましかった。
◎企画賞:若松央樹、浅野澄美(最後から二番目の恋)
大人を主人公にした大人向けのドラマを大人になったかつてのアイドルにやらせて大成功。こういうのを毎クール一作見られたら幸せなんだけど…
◎脚本賞:岡田惠和(最後から二番目の恋)
楽しい人生讃歌でした。性的な話題が多かったり、死を売り物にした最近のある種のドラマ、映画への猛烈な批判は、かなり勇気のいる行為だったと思いますが、私は断固支持。かように、岡田作品にしては珍しくアグレッシブな内容だったことでも印象に残りました。
またこの作品は、山田太一の作品や『俺たち』シリーズなど70年代80年代の作家性の強いドラマへの、2012年時点での岡田さんなりの解答だったのではないでしょうか。
◎演出賞:宮本理江子、谷村政樹、並木道子(最後から二番目の恋)
鎌倉の、東京とは違うゆったりした時間の流れや、湘南の海岸沿い特有の明るい空気感が、みごとに映像となっていました。そしてもちろん、小泉今日子・中井貴一の毎回の口げんかのみごとさ。
◎ベスト台詞賞
今回はきちんとメモしていませんが、『最後から二番目の恋』で、小泉今日子扮するドラマプロデューサーが、自分の作品では人が病気になったり死ぬ場面は入れないと言う。理由は「私がそういうシーンが嫌いだから」。というのがよかった。この『最後から…』、そしてあいかわらず『カーネーション』は、名台詞の宝庫でした。
◎ワースト作品
『カーネーション』
正確に言うと、終盤で夏木マリを起用を決めたNHKスタッフが「ワースト」でした。いかなる理由だかわかりませんが、せっかく成功を収めつつあった自分たちの作品なのに、わざわざどぶに放り込むような真似をよくもまあしたもんだ。
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